「サカイ」でファンキーに盛り上がり、「マックイーン」で手仕事を味わう

パリコレは残すところ2日に。“リシー”と呼ばれるショー後の展示会が多く開かれ、この日から週刊紙「WWDジャパン」10月7日号の入稿が始まり日本の編集部との連絡が頻繁に。加えて今日もシラク前大統領の葬儀の影響でパリ市内の交通はマヒ状態。仕事がカオスになってきました!

ステラ マッカートニーパロディ(STELLA McCARTNEY)」は、“これまでで一番サステイナブルなコレクション”だそう。であれば素材手配・開発の背景などには多くの研究、議論、投資などがあるはずですが、ショーからはストイックさや生真面目さは微塵も感じさせず。サークルモチーフのカラフルなドレスは単純にカワイイ。それこそが「ステラ」ですね。

で、さらにそこを盛り上げたのが、ウィットの効いた演出です。350年の歴史を持つオペラ座の壁一面に交尾をする動物たちの動画を投影しました。私の席の前ではアルマジロの雄が雌が……、来場していたヴィヴィアン・ウエストウッド(Dame Vivienne Westwood)の背後ではクマやシマウマが……。自宅で飼っているカメの雄と雌も夏になるといつもこうだったな、と思い出したりして。そう、これは自然界でごく普通の風景。動物愛護や自然保護を訴えるステラ流のウィットの効いた演出にニヤニヤしてしまいます。ぜひ上の動画で見てください。

2枚目の写真でステラの父、ポール・マッカートニー(Paul McCartney)と写真に収まっている右の女性は、デルフィーヌ・アルノー(Delphine Arnault)=ルイ・ヴィトン エグゼクティブ・バイス・プレジデント。「ステラ」は今年7月からLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトンと提携しました。座席にはサステイナブルな活動に関するステラのからのアツいメッセージ文が。LVMHをパートナーに「ステラ」の活動はさらにパワーアップしそうです。

「サカイ(SACAI)」のファーストルックは世界地図、アクセサリーは丸い地球儀。“ona nation”という今季のメッセージがクリアです。で、思いました。デザイナーの阿部千登勢さんはこれを出す前に悩んだろうな、と。なぜならこれだけ地球環境への問題意識が高まっている今このメッセージを出すことは、逆に「今さら」など通りすがりの“評論家”たちから揶揄され、批判される可能性があるからです。その中で自分の考えを信じて決めて堂々とファーストルックで表現する、その決断力こそ阿部千登勢です。

ということを伝えようとショーの後にバックステージに向かうと、そこにはファンキーな光景が広がっていました。阿部さんは自分のTシャツを指さして「これ、これなの!」と一言。そして隣には存在感たっぷりの黒人男性ご一行とナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)の姿が。男性はなんと、ジョージ・クリントン(George Clinton)でした!名前を知らずとも音楽を聴けば、「あ~」となるキング・オブ・ファンクのミュージシャンです。阿部さんが指さしていたのは、ジョージ・クリントンの曲「One Nation Under a Groove」のジャケ写でした。これ、買いますわ!

バックステージを出て客席で興奮を冷ましていると、「サカイ」のクリエイティブ・ディレクションを務める源馬大輔さんを発見。しみじみ話した後、せっかくなのでブルーライトの中でセルフィーしました。

「ジバンシィ(GIVENCHY)」のショールームの窓から見るエッフェル塔はパリ随一だと思います。そして、このテラスは永遠にオードリー・ヘップバーン(Audrey Hepburn)の指定席かと。クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)は話すと、結構ロックで強い女性ですが、同時に何をやっても品の良さがにじみ出るデザイナーです。そんなムードがショールームにもありました。

「ヴァレンティノ(VALENTINO)」の展示会で見たアクセサリーがパワフルでした。この目が覚めるようなブルーのトートバッグは男子が持ってもカワイイのでは?ショーでは上手に写真が撮れなかったおサルのイヤリングにも再会。目が怖くてカワイイです。

これまでたくさんのショーを見てきましたが、男性モデルが赤ちゃん(の人形)を抱いて歩くのはこの「AGNES B.(アニエスベー)」で初めて見ました。良い! ラッパー、オキシモ・プッチーノ(Oxmo Puccino)の歌が盛り上げます。

「BEAUTIFUL PEOPLE(ビューティフルピープル)」は幾通りにも着られる服を客席の前でデモンストレーションしました。印象に残ったのは「一つの着方だけではなく、その時の時間、出来事、 気分によって、自由自在に着方を替えることができる」というリリースのメッセージ。「家にいったん帰って着替える」ではなく朝と昼と夜とで、同じ服を着たまま違う気分を楽しめるのは面白いです。

ブルーベルが「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」の取り扱いを開始したとのことで、ロンドンブランドではありますが展示会へ。バッグが充実していて、3枚目のカゴバッグは3万5000円程度になるそう。来年の春夏はカゴバッグが大ブレイクする予感です。

ショーの始まりを待つ間に台湾の知人と再会できるのも楽しみな「シャッツィ・チェン(SHIATZY CHEN)」。台北から大勢のセレブリティーが来場して盛り上がっていました。繊細な手仕事によるレースが持ち味のブランドですが足元は全部スニーカー。スニーカーはもはやトレンドではなくスタンダードです。

今季はリネン素材を多く使い、刺しゅうや染色、布を操るクチュールワークをたっぷり見せた「ALEXANDER McQUEEN(アレキサンダー・マックイーン)」。フィナーレにはアトリエの職人やスタッフが全員登場しました。職人と聞くと年配のベテラン技術者を想像しますが、フィナーレに登場した“職人”の多くは若く、意外であると同時に親近感もわき、応援したくなります。彼らの手仕事がたっぷりつまったフィナーレをどうぞ。